おいも貴婦人ブログ

生物系博士課程満期退学をしたAIエンジニアのブログ。

一分子計測まとめ

前置き

Nature articleを読んだときにFRETが理解できていなかったので、一分子計測について勉強しました。私なりにまとめた記事ですので、正確性を欠きます。参考文献を文末に記載していますので、参考にしてください。

FRET効率だけを示せばよいが、どうして、それぞれの色素の蛍光を調べる必要があるのか?

答え

ドナー色素、アクセプター色素の蛍光強度を測る理由は、それぞれの色素がブリーチングしていないかを調べるため。

一分子蛍光観察

蛍光分光法を用いた一分子計測
  • 1946年に、Forsterがドナー色素とアクセプター色素を混合した溶液で、ドナー色素を励起させると、アクセプター色素の蛍光スペクトルが観測した。
  • 空間分解能は数百nm、時間分解能は一分子蛍光相関法で数nsから数msで、一分子時系列データ観測で数10μsである。
蛍光色素の光サイクルと光化学過程
  • 色素の蛍光特性を理解するための基礎は光化学ダイアグラムである。
  • 最初、色素は基底状態S0にあり、光を吸収されると励起され、励起一重項状態に遷移する。その後、数nsの寿命で基底状態に戻る。
  • 第一経路:蛍光が自然放出される過程の一時反応速度定数を\(k_r\)とする。
  • ストークスシフト:色素を励起できる光の波長に比べ、蛍光の波長は長波長となる。
  • 光の励起は同じ構造間でのみおこる。
  • 第二経路:無複写遷移過程S1:\(k_{nr}\)
  • 第三経路:励起3三重項状態への過程T1:\(k_{isc}\)
  • 光を吸収してS1状態に励起された色素の蛍光寿命\( t_0=1/\left(k_r+k_{nr}+k_{isc} \right)\)である。
  • 蛍光量子集率\(\Phi=k_r/\left(k_r+k_{nr}+k_{isc} \right)\)である。
  • 実験ではS0とS1を1,000,000回転/sで行き来する。このとき、T1状態の関与が重要となる。
  • ブリンキング:観測中にT1状態が生じると、一時的に暗くなる。
  • ブリーチング:T1が三重項酸素を一重項酸素に転化させる。この一重項酸素が色素の蛍光を止める。
    • 一重項酸素、三重項酸素の違いは、量子化学的スピン状態の違い。三重項酸素が普通の酸素に対応する。
蛍光強度変調とFRET現象
  • 蛍光は、色素周辺の環境に応じて波長や強度を変化させる。
  • Alexaなどの色素は、チロシントリプトファンなどの芳香族アミノ酸側鎖との衝突により消光する。
  • FRET(Forster Resonance Energy Transfer)は、色素間の双極子-双極子相互作用の励起エネルギー移動を利用して、タンパク質の構造情報を得る。
  • 励起エネルギー移動の測度定数は、\(k_{FRET}=\frac{1}{t_0}\left(\frac{R_0}{R}\right)^6\):\(t_0\)はアクセプター色素がないときのドナー色素の蛍光寿命を表す。
  • \(R_0\)はフェルスター距離:\(R^6_0=8.79\times 10^{23}\frac{\kappa^2 \Phi_D J}{n^4}\)
    • \(\kappa^2 = \left( cos\theta_T-3cos\theta_D\cos\theta_A\right)^2\)
    • \(J=\int^{\infty}_0 f_D(\lambda)\varepsilon(\lambda)\lambda^4 d\lambda\)
    • nは試料溶液の屈折率。\(\Phi_D\)はドナー色素の蛍光量子収率。Jはドナー蛍光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルの重なり積分である。
  • FRET効率(E):\(E=\frac{k_{FRET}}{k_{r}+k_{nr}+k_{isc}+k_{FRET}}=\left\{1+\left(\frac{R}{R_0}\right)^6\right\}^{-1}=1-\frac{t}{t_0}\)
  • \(E=\frac{F_A}{F_A+\gamma F_D},\gamma=\frac{\beta_A \Phi_A}{\beta_D \Phi_D}\)のようにも書ける。
    • ここで、光子検出効率(\(\beta_D,\beta_A\))である。
一分子観察のための光学系
    1. 共焦点顕微鏡
    2. 全反射蛍光顕微鏡
  • 自由拡散するタンパク質の一分子FRET効率観測
    • 実験系
    • 実験結果
  • 試料固定化による長時間計測
    • 実験系
    • 実験結果
  • 一分子蛍光計測の展開
    • FRET効率と蛍光寿命の同時計測
    • 蛍光相関法の発展
    • 高速の分子動画の撮影に向けた挑戦
    • 長時間計測方法の開発

一分子力学観察

  • 力学測定を用いた一分子計測
  • 試料の調整ー一分子をプローブへいかにつけるかー
  • 一分子伸長実験のフォースカーブ
  • 光ピンセット法
  • 磁気ピンセット法
  • AFM
    • AFMによるタンパク質のメカニカルアンフォールド実験
  • 一分子力学測定法でしか解明できない課題:メカノトランスダクション、IDPやミスフォールディング問題