おいも貴婦人ブログ

生物系博士課程満期退学をしたAIエンジニアのブログ。

Nature Review(尻尾をもつバクテリオファージのDNA-パッケージングモーター)

以下に書いたものは、論文を基にした私の理解なので、正確性を欠きます。正確な情報を知りたい場合は、下記の論文を参照してください。また、下記の論文の図を参照することで、理解が深まると思います。

The DNA-packaging nanomotor of tailed bacteriophages(2012)

要約

  • 尻尾を持つバクテリオファージは、化学エネルギーを動きに変えるナノモーターやナノマシーン使って、dsDNAをウィルスパーティクルに注入している。
  • そのモーターはATPを使って駆動していて、キャプシドの中にdsDNAを注入する。
  • 結果として、ウィルスはとてもコンパクトなDNAを保持することが出来る。
  • このレビューでは、ウィルスのキャプシドやモーターのコンポーネントの最近の発見を紹介し、パッケージングの反応中での一つのタンパク質について議論する。これはDNAを再配置するメカニズムについての新たな重要な情報を提供する。

内容

  • 研究が進んでいる代表的なバクテリオファージ
    • Escherichia coli phage λ, P1, P2, T2, T4, T7
    • Salmonella enterica phage P22
    • Bacillus subtilis phage Φ29, SPP1
  • キャプシド内のDNAは、入り口の頂点に垂直な軸としてソレノイド状になっている.
  • 一般的には、注入されたDNAは、初めに入った部分が、放出の時、最後に出てくる。しかし、T4に限っては初めに入った部分が、最初に出てくる。
  • TerLは、Walker A/B-like ATP-binding motifを共通して持つ。しかし、配列の相同性は低い。
  • すべてのファージで、portal proteinは12量体を形成している。(Φ29:1FOU,SPP1:2JES,P22:3LJ5)
  • portal proteinはフレキシブルな構造をとるが、その役割は不明。
  • portal proteinの大きさはΦ29(309AA)からp22(725AA)まであり、大きさに幅がある理由はわからない。
  • p22はgp1,gp4,gp10,gp9,gp26からなる。gp1がprocapsid内に伸びているが、理由は不明。
  • portal proteinにはATP binding siteがない。
  • portal proteinは6回回転軸の6量体の部分と入れ替わる。
  • Φ29は5つのRNAは2次構造がパッケージングに重要だと考えられているが、その詳細は不明。
  • p22のTerSとTerLの複合体が存在。TerS(with ATP)PDB:3P9A,T4に関してTerL(with ATP)
  • TerLのC末端にはDNAパッケージング中にDNAを切るための、ヌクレアーゼ活性部位が存在する。
  • P22やλファージのTerSがDNAの配列を認識し、パッケージング初期に重要である。しかし、挿入中にどういった働きをするかは不明。
  • TerSが何量体の複合体を形成するかは不明。水溶液中では9量体や10量体が見られる。
  • Φ29はTerSのタンパク質、ゲノムに含んでいない。
  • Packaging motorが生み出す力の仮説
    • 構造変化や静電相互作用に起因する
    • terminaseがATPの力を使って、直接DNAを注入する。
    • terminaseがATPの力をportal proteinに伝えて、portal proteinがDNAを注入する。
  • TerSやTerLのバッケージング中の複合体の大きさはわからない。溶液中の複合体の大きさと近いと考えられている。
  • Φ29とT3は、1ATPで2bpのDNAを伸長させる。
  • 180-1800per secondの伸長速度を生みだし、最大で60-110piconewtonsの力を発揮する。
  • DNAモーターの伸長速度はほぼ一定であり、DNAの長さに依存する。これはDNA結合タンパク質の量と比例すると考えられている。
  • Φ29の伸長は、10bp伸長するステップからなるが、さらにそれを2.5bp伸長するステップにわけることができる。

以下にパッケージングモーターの反応概略図を示します。
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下図はphi29ファージのDNA分子モーターです。下図の構造はDNA分子モーターの複合体でなく、portal proteinのみです。
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